この記事の担当者
渡辺友栄
【人材業界専門エージェント】株式会社インプレッション
コンサルタント 人材業界歴20年
こんにちは。
インプレッションの渡辺友栄です。
上場人材会社の上半期の決算発表から、業績結果と今後の見通しについてまとめてみました。
特に業界をリードする大手企業の動向は、
中小企業の少し先の未来予測にも繋がりますので、
業界従事者として、大変参考になります。
今回は、大手および紹介事業をメインとした企業が中心ですが、
次回は派遣事業もまとめてみたいと思います。
■株式会社リクルートホールディングス
上期連結売上 17,987億円(前年比+5.4%)
<セグメント別>
HRテクノロジー事業:
米国でのマネタイズ改善により増収傾向。日本のIndeed PLUSも成長中。
マッチング&ソリューション事業:
⼈材紹介サービスは、安定した事業環境が継続し、売上収益は堅調に推移
求⼈広告サービスは、Indeed PLUSへの移⾏が進んでいるものの、期初想定よりもペースが緩やか
販促領域は、美容、旅⾏、飲⾷、住宅等の主要な分野で増収
人材派遣事業:
⽇本では、⼈材派遣需要が引き続き伸⻑し、稼働⼈員が増加
海外では不透明な経済⾒通しを背景に⼈材派遣需要の鈍化が継続
当上半期のセグメント売上収益は8,403億円
■パーソルホールディングス株式会社
上期連結売上 7,175 億円(前年比+9.6%)
<セグメント別>
Staffing SBU
人材派遣・紹介 第1四半期、第2四半期も引き続き堅調
トピックス:パーソルテンプスタッフが、日本マイクロソフトとの協業により、デジタル人材を育成
BPO SBU
コロナ関連案件の剥落により前年同期比 30%の減益となったが、
コロナ関連案件以外のオーガニックな事業については堅調。
トピックス:中小企業向けのオンライン BPO サービス “StepBase”を9月に開始
Technology SBU
売上収益は、前年同期比10%強の成長となり堅調
IT・DX ソリューション:エンジニア前年同期比で約20%増え、約 3,300名
平均請求単価は、3%程度の増加
機械、電気エンジニアリングについては、エンジニア約10%の増加
平均請求単価は、8%程度の増加
登録派遣は、エンジニア数は前年同期比で4%の減となったが、平均請求単価は、4%程度の増加
・登録派遣を除くエンジニアの稼働人数と稼働率
第1四半期600名強の新入社員の採用により、第2四半期のエンジニア数は前年同期の約6,000名
から約 6,900名に増員。稼働率は、89.4%。
・トピックス:コンサルティングやPMO、AI・デジタル技術領域などの人材教育を強化
Career SBU
売上収益の期初見通しが前年同期比 12%増に対して、上期実績は 15%増
コンサルタント数は、第 1 四半期の2,400 人に対して第2四半期は 2,451人と、
下期のマーケットの不透明さを踏まえてほぼ維持。
・トピックス:
「AI 戦略本部」の設置により、生成 AI を活用し、よりマッチングの精度を高め、効率性を高めていく。
Asia Pacific SBU
為替影響もあり、増収増益(+16.8%)
人材派遣は一部の国を除き、堅調に推移
人材紹介は引き続き低調
その他
シェアフルへの投資を引き続き強化
その為、赤字額、昨年度の 7 億円に対して、今年度は 19 億円
<人材紹介市場の下期見通しと方針>
人材紹介市場について
転職希望者の様子見 が継続
一方、求人企業側の採用意欲は引き続き高いが、厳選採用という、一定ハードルを上げられた形で
採用活動が継続されるであろうと予測
そうした見立てから、下期も人材獲得競争が激化するため、人材獲得に力を入れていく必要がある。
これにより、方針としては、マーケティングの取り組みをより一層強化し、積極的に投資。
コンサルタント数を適切にコントロールすることで、生産性をしっかりと上げていく。
■株式会社 MS-Japan
全社上期売上:23.8億円(前年比+4.8%)
今期より豪州海外子会社となり連結売上高は38.6億円(前年比+70.3%)
人材紹介事業、ダイレクトリクルーティング(DRM)事業は、それぞれ中間期過去最高売上高を更新
<セグメント別>
人材紹介事業
・売上高:21.9億円(前年比+6.8%)と堅調に成長。
・新規登録者数(9,472名、前年同期比+3.8%)、
・登録者・求人獲得には、独自メディアからの送客、自社DSPを活用した動画・画像による安価なリターゲティング広告による認知・獲得施策を実施。
これにより広告宣伝費は、前年同期比で6.0%減少。獲得競争激化による登録単価上昇が激しいマーケティング環境下で
オリジナルのAIやDMP(興味関心データ)を用いたマーケティング施策が競争優位性を高めている。
・既に運用しているRPAによる自動マッチングに加えて、マッチング率の向上を目指してAIモジュールの開発に着手。
メディア事業
・売上高:1.2億円(前年比-22.7%)
・コロナ禍における管理部門DX需要が一巡し、にDXテック関連の広告出稿が減少
・非テック系スポンサーのポートフォリオが強化により、非テック領域の売上高は、前年同期と比べて+89.8%
・今後は教育系、オフィス系の新サービスのローンチを計画。
ダイレクトリクルーティング(DRM)事業
・売上高 5,500万円(前年比+12.6%)
・掲載求人数(前年9月末比+72.1%)の増加
・マーケティングオートメーションの効率的な稼働によるレコメンドや、エージェント向け自動スカウト機能のローンチに
より堅実な成長。現在行っているAIモジュールの開発により、一層の自動化・効率化を図る。
■株式会社キャリアデザインセンター
上期売上高:85億円(前年比102.5%)
<セグメント別>
メディア事業
・売上高:30億円(前年比108%)
・外部集客チャネル以外からの登録者獲得、新規プロモーションなど広告宣伝費への投資などにより新規登録者数増加
人材紹介事業
・売上高:16億円(前年比101%)
・一般領域:
前期に採用需要が急速に高まった営業・販売・サービス領域に落ち着きが見られた
採用基準の厳格化が進み、採用内定率が低下したことで、成約件数は減少傾向
求職者との接点(面談など)を強化、自社HP経由の集客や知人紹介の取組みにより登録者数増加
・ミドル領域
ハイクラス層をターゲットとする求人案件の獲得強化で成約数増加
新卒事業
・売上高:4.9億円(前年比106%)
IT派遣事業
・売上高:36億円(前年比97%)
<人材紹介市場の下期見通しと方針>
コロナ禍の数年間に採用を控えていた求人企業が、
コロナ終息後に一斉に採用活動を始めたことによりマーケット全体が活況となったが、
求人企業において採用予定人員が確保されることとなった。
そのような状況から現在、求人企業において採用は一服感が起こっており、
さらに採用を継続している企業の採用基準は上がり、結果として採用内定率が低下する傾向がみられている。
求人企業における採用基準の厳格化などの傾向は引き続き継続すると見込む
各事業部の各種施策・取り組みの他、
新規施策で新たなマーケットを狙うことで、新たな収益基盤の創出を目指す。
⇒『Direct type』(ITエンジニアの採用を支援するサービス)立ち上げ、関西エリアの拡販
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こちらは、第3四半期まで出ている状況ですが、参考まで。
■株式会社ジェイエイシーリクルートメント
国内人材紹介業は、過去最高の売上高、利益高。
海外事業も、固定資産現存の営業があったタイを除けば黒字を維持。
国内求人広告事業も確実に成長
コンサルタント数は、採用継続と離職率低減により、計画を上回る増員。
先行投資により入社年次の浅いコンサルタントが増加し、生産性(コンサルタント一人当たり月間売上高)は、前年度対比でやや低下。
※参考まで:直近10年間で2022年(238万円/月)が最高。
その後2023年220万円、2024/3:204万円、2024/6:210万円、2024/9:209万円
<2024年度第3四半期の概況・取り組み>
国内人材紹介事業
・政府による雇用の流動化施策と人的資本経営の促進などに伴い、直近の有効求人倍率には、特段の変化もなく、国内企業の社員採用意欲は高い水準を保つ。
・4月の賃上げ前にみられた求職者の流動性低下は、回復し、ミドル・ハイクラス人材の流動性も堅調に推移
海外事業
・アジア地域を中心に厳しい状況が続いている
⇒各国子会社との連携によりグローバルアカウントマネージメントを推進し、海外に展開する日系企業の採用市場のシェア拡大を図る
国内求人広告事業
・スカウト代行の強化による売り上げ拡大、グループにおけるシナジー強化(求人や人材)
・顧客企業によるダイレクト・リクルーティング向けの営業活動
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業界全体の大きな流れとしては、
・国内の紹介業においては、現在のところは堅調
・国外事業の今後は不透明、また海外の影響が国内にも及ぶ可能性あり
・コロナ後の採用過熱感が収束していく傾向から、一般紹介に影響が出る可能性あり
・ミドル以上の紹介業は、今のところ堅調
・今後の対策としては、AI等テクノロジーによる業務効率化、新規事業による新たなマーケットの創出、
などが挙げられると思います。
業界従事者の方が今後のキャリアや転職先の会社選びを考える際のご参考になれば幸いです。
インプレッション 渡辺友栄
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